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SRE初心者ガイド - 未経験者でもわかる、Site Reliability Engineeringの基本解説

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SREとは何か?

SREとは、Googleが開発したSite Reliability Engineeringの略称であり、システムの信頼性を保つためのエンジニアリングフレームワークの一つです。その目的は、システムのスケーラビリティ、パフォーマンス、セキュリティ、そして何より信頼性の向上にあります。具体的には、システムの運用/保守を自動化し、開発と運用(DevOps)の間のギャップを埋めることで、ソフトウェアの信頼性や品質を向上するのがタスクとなります。 システムのリスクを管理し、問題が発生した場合には迅速に広範囲なプロブレム解決を行うことが求められます。また、システムの耐障害性や冗長性を確保し、パフォーマンスの最適化を図るとともに、システムの安定動作に貢献します。したがって、SREの役割は、単に問題を解決するだけでなく、それらが発生しないように予防措置を講じ、可能な限り問題を未然に防ぐという予防主義的な役割を果たします。 ただし、そのためには、あらゆる種類の技術やツール、フレームワークに精通している必要があります。そのため、SREはコーディング能力、システムアーキテクチャ、ネットワーク、セキュリティなど、広範で深い技術知識が要求される職種と言えます。 また、SREは、DevOpsの思想を体現しているとも言えます。つまり、開発(Development)と運用(Operations)の間の壁を取り払うことに重点を置き、両者の連携を深めることで、製品の品質向上と効率的な業務遂行を目指しています。 ここで重要なのは、「信頼性」に関するGoogleの哲学です。Googleでは「すべてのシステムは結局は故障する」という前提に立ち、そのような状況でもユーザーにとって信頼性の高いサービス提供を可能とする仕組みづくりを考えています。 以上が、SREの基本的な概念と役割についての説明です。次の節では、SREの歴史と意義について詳しく説明します。それにより、SREの全体像をより深く理解することができます。

SREの歴史と意義

SREという概念は、2003年、Googleの内部チームによって誕生し、システムが規模を増すにつれて生じる様々な課題に対抗するための手法として考案されました。従来のシステム運用は、単純作業の繰り返しや緊急対応が多く、システムが複雑化、大規模化するにつれてそれらに追われることが多くなりました。SREはそのような問題を解決するため、ソフトウェアエンジニアリングの原則を適用し、システムの運用作業を自動化することを目指しました。 その結果、システム全体の信頼性を保ちつつ、インフラ的な問題だけでなく、開発のニーズにも迅速に対応できるようになり、このアプローチは成功を収め、Google内外で広く採用されるようになりました。 SREの意義は、大規模かつ複雑なシステムを安定的に運営し続けるためのベストプラクティスを形成し、またそれをエンジニア全体で共有・浸透させるところにあります。SREを通じてエンジニアは自らの作業をコード化することが求められるため、「運用」と「開発」の境界が曖昧になり、DevOpsの理念である"運用に対する開発の参画"、"開発の生産性向上に運用の貢献"が具現化します。 また、SREの意義はあくまでユーザーに対するサービスの品質保証にあります。規模が大きくなるほど、またシステムが複雑になるほど、トラブルが発生した際の影響も大きくなります。その様な状況を避けるための「エラーバジェット」の概念や、「可用性」を数値化することで、具体的な目標を設定し、全体のパフォーマンスを一貫して管理し続けることが可能となります。 このように、SREはシステムの信頼性を確保するための有効なフレームワークであり、その歴史と意義を理解することで、SREを適切に導入し活用するための道筋が見えてくるはずです。次の章で、具体的な業務内容について詳しく解説します。

IT業界におけるSREの役割

IT業界におけるSRE(Site Reliability Engineering)の役割は非常に重要であり多岐にわたります。最も核心的な役割は「システムの信頼性を確保する」ことです。信頼性はシステムが期待通りに機能し続ける、つまりサービスがユーザーに対して約束したものを実際に提供し続けられる程度を示す要素です。そしてSREの目指す信頼性については二つの大きな観点があります。 一つ目は、システムがダウンタイムなく中断することなく動作し続ける「可用性」です。これはウェブサイトやオンラインサービスが24時間365日どの時間でもアクセスできる状態を維持することを指し、SREはこのステータスを維持し、ダウンタイムを極力減らす步きを徹底的に追求します。 二つ目の観点は、「サービスレベル目標(SLIs)」「サービスレベル目標(SLO)」「サービスレベル契約(SLA)」の3つの項目で示される「パフォーマンス」です。SLIsはサービスの品質を測定する基準、SLOはSLIsを達成するための目標、SLAはその目標を満たさなかった場合のペナルティを定義した契約です。これらにより、システムやサービスのパフォーマンスを管理し、ユーザーに対する約束を明快にし、それを達成するためにエンジニアリング努力を向けることが求められます。 信頼性とパフォーマンスを確保するために、SREは事前に問題が発生しないようにプロアクティブなアプローチを取ります。システムの監視、ログ収集、障害予測、自動復旧システムの開発など、プレベンティブな活動を行い問題を早期発見し対策を講じます。 また、SREはIT運用だけでなく開発チームとも連携し、システムの設計段階からその信頼性とパフォーマンスを考慮した開発が行われるようにスケジューリングやプロジェクトのプライオリティ設定にも関与します。 さらに、SREは持続可能な開発のために、問題が発生した際はその原因を追究し、その結果に基づいてシステムの改善を行う「ブレームレスポストモーテムカルチャー」を推進します。これにより、同じ問題が再発することなく、システム全体が進歩し続けます。 以上のように、SREの役割は内容が深く、幅広いエリアをカバーしています。システムの信頼性と、それによりもたらされるユーザーエクスペリエンスの向上には、まさにSREの役割が必要不可欠と言えます。これらの役割を理解し適切に機能させることで、より良いITサービスを提供する道筋が見えてくるでしょう。次の章では、具体的にどのようなスキルや知識がSREには必要なのかについて詳しく解説します。

SREの主な業務内容

SREの主な業務内容は大きく分けて3つに分類されます。それらは、「システムの稼働監視と問題解決」、「サービス改善」、「ソフトウェアリリースと変更管理」です。 まず、「システムの稼働監視と問題解決」についてです。ここでは、システムの状態やパフォーマンスを常に監視し、問題が発生した際には迅速に対処します。その際に、システムが下記のSLI, SLO, SLAを満たすようにするのが重要な業務となります。なお、具体的なツールとしては、PrometheusやGrafanaなどの監視ツールを使用します。 続いて、「サービス改善」についてです。これは、ブレームレスポストモーテムアプローチの一環でもあります。具体的には、インシデントが発生した際に問題の根本原因を究明し、その改善策を実施します。その改善策としては、システムのアーキテクチャの見直し、設定の調整、自動化の導入などがあります。 最後に、「ソフトウェアリリースと変更管理」についてです。これは、システムの変更を管理し、新しい機能を安全にリリースする工程を管理する役割です。具体的には、システムの変更を計画し、その変更を行った後のテスト、リリース、およびそれらの結果の分析を行います。そのため、CI/CDツールを効果的に使用する能力が求められます。 以上がSREの主要な業務内容となりますが、業務内容は会社やプロジェクトによって異なるため、求められるスキルも多岐にわたります。そのため、SREとして働くためには、システム全体を理解し、適切な方法で問題解決を行うための幅広い知識と経験が必要です。次の節では、SREに必要なスキルと知識について具体的に説明します。

SREに必要なスキルと知識

SREに必要なスキルと知識は、主に「技術的なスキル」「システム全体の理解」「意思決定力」の三つに集約されます。 まず、「技術的なスキル」についてです。SREの業務を遂行する上で、プログラミングスキル、ネットワーク知識、データベース管理、システム管理などの基本的なITスキルが求められます。また、Cloudサービス(AWS,Google Cloud Platform,Microsoft Azureなど)の使い方にも習熟していることが重要です。さらにはCI/CDツール(Jenkins, Circle CI, etc)、コード管理ツール(Git、Svnなど)、監視ツール(Prometheus, Grafana等)の知識と実務経験も必要とされます。 これら一連のオペレーションを効率化するため、コーディングスキル(PythonやGo等)も非常に重要となります。 次に、「システム全体の理解」についてです。システムの安定稼働を保つためには、システム全体を理解し、それぞれのコンポーネントがどのように働き、問題が起きた場合にどう影響するかを予測できる能力が求められます。これには、アーキテクチャ設計を理解する能力や図解能力も含まれます。 そして、「意思決定力」についてです。SREの職務は、問題解決や適切なシステム運用方法の策定、リスク分析と対策の決定等、高度な意思決定を伴う作業が含まれます。そのため、情報を迅速に理解し、的確な判断を下せる論理的思考力が求められます。 さらに、先程の業務内容で述べたSLI・SLO・SLAの理解も重視されます。彼らはシステムの可用性を客観的に評価する基準であり、SREの業務を行う上で重要な要素となります。 以上がSREに必要な基本的なスキルと知識ですが、実際には社内の環境や業務内容により、求められるスキルは変わる可能性があります。初心者の方は、これらの基本スキルを身につけることから始めることをおすすめします。続いて、具体的なSREの導入方法とその進め方について解説します。

SREの導入方法と進め方

SREの導入方法およびその進め方は、以下の5つの手順で進めます。 1. 「SREチームの設立」: まずは組織内に専門のSREチームを設立するところから始めます。このチームはシステムの運用と開発を一手に引き受けるため、そのメンバーは前述したような技術的なスキルだけでなく、システム全体を把握する視点と、迅速な判断・対応力が求められます。 2. 「SLI/SLO/SLAの設定」: SREの導入に際して重要なポイントとなるのが、システムの可用性を客観的に評価するSLI・SLO・SLAの設定です。これらはシステムの品質を数値で表現し、トラブルが発生した際の具体的な対応基準となるため、設定には組織内のステークホルダー全員で慎重に議論を行う必要があります。 3. 「自動化と監視」: SREは現状のシステムの問題点を改善し、可能な限り自動化を進めることを目指します。また、上記のSLIを検出するための監視システムを確実にセットアップします。こうした事項は、システムの安定とエフィシエンシーを保つために不可欠です。 4. 「エラーバジェットの管理」: SREはシステムの稼働率を最大限に保つことを目指す一方で、エラーバジェットという考え方を用いて、一定のダウンタイムを許容します。これは新規フィーチャー開発とシステムの安定性をバランス良く管理するための手法です。 5. 「レビューと改善」: 最後に、SREは定期的にシステムとチームのパフォーマンスをレビューし、必要な改善を行います。これにより、システムの品質向上とともにチームのスキルアップも図られます。 以上の手順でSREの導入を進めることで、システムの安定稼働を実現し、組織の業績向上に寄与します。ただし、これらの手順は参考の一つであり、具体的な導入方法は組織の事情や業種により変わり得ます。そのため、自組織の状況とニーズに合わせて適切なSREの導入方法を見つけることが重要です。

初心者がSREを学ぶための方法

SREを学ぶための具体的な方法について以下に示します。 まず、自身のITスキルレベルを把握することが必要です。実際のSREの業務内容を理解するためには、一定のIT知識と経験が前提となります。例えば、プログラミング経験、特にPythonやGoなどの言語に対する理解、Linuxの基本操作、ネットワークやシステムの知識、などが求められます。自身のスキルレベルを正確に把握し、必要なスキルについて学習を始めることが重要です。 次に、SREに関する文献土書籍を読むことをおすすめします。特にGoogleのSREチームによる公式ガイドである「Site Reliability Engineering」は必読の一冊と言えます。ここではSREの哲学、主な業務内容、業界内での役割や導入の手順等について詳しく解説されています。また、「The DevOps Handbook」や「Continuous Delivery」といったDevOps関連の書籍も役立つでしょう。 さらに、オンラインの学習リソースも活用しましょう。例えば、CourseraではGoogleが提供する「Site Reliability Engineering: Measuring and Managing Reliability」というコースがあります。これはGoogleのSREのエキスパートが講義を行うもので、SREにおけるSLIs/SLOs/SLAs、エラーバジェット、自動化の方法などについて深く学べます。 また、実際の業務に活用するためには、SREに関する具体的なツールについても理解しておくことが有益です。具体的には、モニタリングにはPrometheusやDatadog、自動化にはAnsibleやTerraform、エラートラッキングにはSentryやNew Relicといったツールがあります。 さらに、可能であれば実際のプロジェクトや業務においてSREの手法を活用することをおすすめします。学んだ知識を実際の問題に適用し、経験を積むことでより深い理解に繋がります。 最後に、SREとして働くためのスキルアップは持続的な学習が求められます。業務に取り組む中で遭遇する新たな問題を解決する技術を学んだり、新しいツールや手法を自分のスキルセットに追加したりしましょう。その上で、自己を常に振り返り、自身のスキルと知識を更新し続けることが成功への鍵となります。

まとめと次の一歩

本記事では、SRE(Site Reliability Engineering)の意義から、その具体的な業務内容、必要なスキル、そして学習方法まで、幅広くSREについて解説しました。しかし、ここで紹介した情報はあくまで一部であり、IT業界は日々進化し続けるため、新たなツールや手法が続々と出てくることを念頭に置いてください。 SREとは、システム信頼性を高めるための専門職で、開発とオペレーションズを統合した役割を担っています。その業務は多岐に渡り、システムのスケーリングや性能最適化、データセンターの管理、インシデント対応などが含まれます。 SRE業務の成功には、コーディング能力(特にPythonやGo)、システム管理、ネットワーク知識など幅広いスキルと知識が必要となります。また、DevOpsの手法やSREに特有のSLIs/SLOs/SLAs、エラーバジェットなどのコンセプトも理解することが重要です。 だからこそ、絶えず学び続ける姿勢が求められます。SREの知識を深めるためには、専門書を読んだりオンラインコースで学んだりすることが有効です。また、実践的な経験を得るためには、具体的なプロジェクトや業務にSREの手法を適用してみることがおすすめです。 SREは難易度が高い職種ではありますが、その分、達成感やプロフェッショナルとしての満足感も大きいと言えるでしょう。そして、その業務内容からもわかるように、SREという職種はIT業界が常に新たな問題と向き合い、それを解決しようとする力の象徴でもあります。 SREに興味を持つ初心者の方々が、この記事を通じて最初の一歩を踏み出し、ぜひともこの領域を深く探求し、自身の知識と経験をさらに強化していくことを強くおすすめします。

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執筆者のプロフィール画像J
【学歴】工学修士 【職歴】大手企業エンジニア 【自己紹介】 はじめまして、Jと申します。工学修士の学位を取得後、大手企業でエンジニアとして数年間活躍してきました。その経験を活かし、現在は「Tasuke Hub」のライターとして、皆様の困りごとを解決する手助けをしております。 専門は工学ですが、その知識と技術を用いて、日々の生活の様々な問題に取り組んでいます。特に、技術的な問題について深い知識を持っており、抽象的な概念から具体的な問題解決まで幅広く対応できます。 あなたの困りごとや疑問があれば、どんなことでもお気軽にお尋ねください。あなたの問題解決のために、私の全知識と経験を活用します。あなたの日々が少しでも快適になるように、全力でサポートいたします。 よろしくお願い申し上げます。